池大雅 天衣無縫の旅の画家 展

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池大雅 天衣無縫の旅の画家  国立京都博物館 ~2018.05.20

海外で大規模な大雅の展示会が開かれているというのに、なぜ本国では放置されたままでいるのかと思っていたのだが、やっと85年ぶりの大規模な展覧会が京都博物館で実現した。

    確かに、大雅は扱うのが難しいとは思う。大量の作品と彼が成した様々な試み、そして美術史的な意味、影響、周辺環境などなどと考えて行くと、恐ろしいものになる。

    今回の京都博物館の展示には感謝する。

    長谷川等伯や伊藤若冲の展示の時を思い出し、さぞや沢山の人達が京博へ押しかけているだろうと、朝一番で駆けつけたが、拍子抜けするくらいに閑散としている。鑑賞する者としてはありがたいが、この状況は病巣ではないかと心配になる。

    先に書いたように、大雅は巨大な山脈なので、簡単に述べることができない。展示もかなり工夫をして、その多方面からの視点を提供している。それでも162点にものぼる作品を2時間半かけて見終わって感じるのは、彼の描く「迷遠法」による山水画の世界に迷い込んでいるかのようなものだ。

    しかし、迷い込んだこの山中は気持ちのよい場所で、それが彼の絵の魅力となり、多くの人が彼を愛し敬ってきたところの物だとわかる。そして、考えて見るとそのような画家が他には居ないのだ。

私も遅きを厭わず、反省をして、これからも務めようと考えるのだった。

    

   見たことのない沢山の大雅の実作品を目にして、彼の全体像に見当が付けられたのは有難い。図版を見ても、その本当の姿を類推することができるので、これからゆっくりと分析をすることができる。またこの展示会で、思いもしない数々のヒントを得ることができて、私は近年にない幸せに浸っている。

そして私が確信しているのは、この巨大な山脈はまだまだ活動をしていて、止まっていないということだ。未知の世界を抱えているのだ。

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