子供の頃、父親が寝室にしていた四畳半の欄間に、複製の扁額をかけているのを眺めていた記憶がある。
なんだか、しょぼくれた絵で、描かれている行灯の横で目付きが悪くて意地悪そうな爺さんが本を読んでいる。横になんだかヒョロけた文字がウネっていて、さっぱり読めない。
父親は大層気に入っているようなので、聞いてみると、えらい坊さんの絵だということだった。
こんな貧相な爺さんが、偉い人なんだということだけが記憶に残っている。
このコロナウィルスの流行を避けて、人は家に篭ることが多くなった。世に交わらざるにはあらねども、一人遊びぞたのしきである。とはいっても良寛は本を読んでいる。時空を超えて世の中に交わっているのだ。
現代では本の他にネットを通じて世の中に交わることは容易になった。良寛の一人遊びとはどんなものだったのだろう。