ポストモダンの水墨画とは

 新年明けましておめでとうございます。
 歳の初めに、自分の考える水墨画について明確にしておこうと思っていたのだが、書くのに時間がかかってしまった。

 私の想う水墨画は「芸術とは人間として自由に生きるための技術」という定義に基づく。その視点で美術史を組み立てていて、そこから水墨画が生まれてくると考えているのだ。

 近代の終焉は幾度も叫ばれながらも、その度に生き延びて現代に至っている。多くの人が、人間の欲望と定理を基準とした哲学に代わる、新しい時代の哲学を受け入れることは簡単ではないだろう。しかしそういっている間に、世界は取り返しのつかない様相を示しつつある。そんな時代の芸術とは、自己の自由に頼るものとなる。

 翻って考えてみると、そうした芸術は、こうした時代の変換期に幾度も生まれてきた。水墨画の歴史は、そのように解釈される物の一つだろう。

 世界を自分の目で見ることにより、自分が見え、自己を脱した自由となる。近代の終わる時、この技術は一部の者にだけではなく、多くの人に求められることになる。それゆえに、私は自分が描くだけではなく、求める人にもこの術を教えることを重視している。私が考えるポストモダンの芸術とは、このような物だ。